空家を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を活用しましょう。
2024/08/26
制度の概要
不動産の中でも特に住居系の用途で使用されている不動産については、優遇措置が設けられております。その中でも特に代表的なのは、マイホームを売却した場合の3,000万円の特別控除の制度ではないでしょうか。
この規定は、ご自宅として使用している(過去に使用していた)家屋又は家屋及び土地を第三者に売却した場合に、もうけ(所得金額)から3,000万円を控除する規定です。
今回ご紹介させて頂くのは、このマイホームを売却した場合の3,000万円の特別控除と制度の効果自体は同じであり、もうけ(所得)から3,000万円を控除する規定という点は共通しています。
相違点として、この規定は相続によりお亡くなりになった方がお一人で住んでいた自宅(土地及び家屋の両方)を相続人が取得し、相続後は空家となっていた土地及び家屋を売却し、一定の要件を満たしていれば3,000万円控除の規定が適用されます。家屋のみ又は家屋の敷地のみを相続した場合には特例の適用は受けれません。また、相続人でない方が遺言により遺贈(包括遺贈は除きます)により取得した場合も適用は受けれないのでご注意ください。
このほか相続で引き継いだ空家について今回ご説明させて頂く3,000万円控除の規定を適用し、同じ年に相続人ご自身が住んでいた自宅を売却した場合には、マイホームを売却した場合の3,000万円控除と空家の3,000万円控除の併用は可能ですが、両方合わせて3,000万円が上限となります。(措通35-7)
1.空家の要件
空家については様々な問題点がありますが、その中でも旧耐震基準など耐震性能が乏しい家屋ついては倒壊のリスクがあり、周辺関係にも悪影響を及ぼしかねません。税制上でも、空家対策の一環として優遇措置が取られており、不動産についても一定の要件が定められております。
<要件>
① 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。(旧耐震基準)
② 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
区分所有建物とは、1階は父、2階は子の名義で登記されているような建物をいいます。マンションは区分所有建物になりますので、適用は受けれないことになります。
③ 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
「被相続人以外に居住していた者」の範囲は、被相続人の居住の用に供されていた家屋を生活の拠点として利用していた当該被相続人以外の者のことをいい、当該被相続人の親族のほか、賃借等により当該被相続人の居住の用に供されていた家屋の一部に居住していた者も含まれる。(措通35-12)
同居ではなく居住とされていることから、被相続人と完全に別に生活していたとしても、同じ家屋に生活の拠点として住んでいる方がいれば、空家の要件を満たさないです。
④ 被相続人が居住の用に供することができない特定事由があり一定の要件を満たす場合には、居住の用に供することができなくなる直前まで被相続人が居住していた家屋であること。
相続開始の前に、要介護認定や要支援認定等を受けて特別養護老人ホームなどの施設に入居している場合は居住として扱われる場合もございます。その場合は、施設に入居する前までは被相続人がその家屋に居住し、施設に入居してから相続開始時まで継続して空家状態である必要があります。詳しい要件については、専門家に確認した上で、申告することをおすすめします。
⑤ 被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる一の建築物のみが被相続人居住用家屋(適用対象となる家屋)に該当します。当該一の建築物以外の建築物は、被相続人居住用家屋には該当しません。
母屋と離れ・倉庫・車庫等と複数建築物がある場合には、母屋のみが対象となります。母屋と離れ等を一体として利用していたとしても、離れ等は適用の対象とはなりません。 母屋以外の部分の譲渡対価の金額は、下記2.③記載の譲渡代金が1億円判定の際には含みません。
2.売却物件の要件
この制度は老朽化した空家を放置することを防止することが制度趣旨の一つです。そのため、老朽化した空家をリフォームしたり、取壊して更地とすることが要件に含まれております。共有で相続した場合には、共有者それぞれで3,000万円(令和5年の税制改正により、相続人が3人以上の場合には、控除額がそれぞれ2,000万円までとされました。)までの控除額がございますので、単独で所有する場合より有利になるケースがあります。
① 売却物件が次のいずれかに該当すること。いずれも、相続時から譲渡時まで、空家の状態が継続していることが必要になりますので、貸付(無償の場合も含みます)や事業、居住の用に供しては要件を満たしません。一時的な利用や無償での貸付も認められておりません。
イ 相続等により取得した家屋の売却又は家屋及び敷地を売却であること
事前に家屋を今の耐震基準に適合させるためのリフォーム工事を行う必要があります。
ロ 敷地のみの売却
事前に家屋等の全部を取り壊す必要があり、更地売却が前提です。
② 相続の開始があった日の3年後の12月31日までに売却すること
③ 売却代金が1億円以下であること。
④ 第三者への売却であること(親族など特殊な関係がある場合は適用不可です)
⑤ 同一の被相続人から相続により取得した家屋又は敷地の売却についてこの特例の適用を受けていないこと。
⑥ 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(措法39)や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
<売却代金が1億円以下の判定の留意点>
・居住用家屋取得相続人(被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を取得した相続人)が元々所有していた持分の譲渡代金も含みます。
・店舗併用住宅のような場合で居住用と非居住用部分がある場合には、非居住用部分の譲渡代金も判定に含みます。
・各相続人が共有により取得した場合でも、他の共有者の譲渡代金も判定に含みます。
これまでは売却する場合には、上記イ又はロのどちらかの状態で売却する必要がありました。令和5年税制改正により令和6年1月1日以降に売却する場合には、買主がリフォームや建物の取壊しをする場合も認められるように改正されました。
空き家の3,000万円控除は、前提として市役所に事前に申請手続きを行い、「被相続人居住用家屋等確認書」を発行してもらう必要があります。
<令和5年度税制改正の内容>
①譲渡時から譲渡の日の翌年2月15日までにその家屋が耐震基準に適合していること
②譲渡時から譲渡の日の翌年2月15日までにその家屋の全部の取壊し若しくは除却がされ、又はその全部が滅失をした場合
3.被相続人居住用家屋等確認書の発行
この規定の適用を受ける際に、一番手間がかかるのはこの確認書の発行手続だと思います。委任状があれば、不動産業者でも税理士でも代理申請は可能です。
必要な書類は次の通りですが、各市町村によって少し書類が異なる可能性もありますので、申請する際には不動産の所在する市役所のホームページにより必要書類をご確認ください。
<市役所へ提出する書類の一例>
1.被相続人の住民票(除票)
2.相続人(全員)の住民票
※ 相続後に2回以上住所変更がある場合は、戸籍の附票が必要です。
3.不動産売買契約書の写し(土地等の売買契約書)
4.閉鎖事項証明書(更地売却の場合、建物を取壊した証明が必要です)
5.次のいずれか
① 電気、水道又はガスの使用中止日が確認できる書類(ガスの閉栓証明書等)
② 仲介業者の広告(広告に空家等・更地売却等の記載が必要です)
6.家屋、更地の写真
市役所への申請は、必要書類がそろった段階で手続される方が望ましいです。
確定申告時期になって急に適用を受けるために手続きを開始しても間に合わない可能性もありますので、可能であれば年が変わる前に事前にご準備しておきましょう。
売却をご依頼する不動産業者の方より詳しい説明もあるかと思いますが、適用の可否についてはよくご相談の上で、ご判断頂ければ失敗することもないかと思います。最終的にはご自身又は税理士に依頼して確定申告書の提出して頂く必要がありますので、不明な点は税務署や税理士にご相談の上、忘れずに確定申告書を提出しましょう。
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