不動産の共有所有のリスクについて

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不動産の共有所有のリスクについて

不動産の共有所有のリスクについて

2024/09/06

 故人(被相続人)の財産の中で不動産をお持ちの場合、誰が取得するのか悩まれるケースは多いと思います。特に現金等の金融資産が少ない場合、全財産に占める不動産の割合が高くなりますので、法定相続分の通り遺産を取得しようとすると、単独で不動産を取得した相続人は、法定相続分を超える財産を取得する結果になる場面が多いです。そのような場合に共有での取得を検討することがありますが、一度共有所有にすると共有状態を解消するためには、思わぬ費用と時間がかかる可能性があります。今回は共有状態の不動産のリスクについて、ご紹介したいと思います。

 前提として遺産分割については、一般的には次の順番で検討します。それぞれの分割方法を併用することも可能で、例えば収益不動産は代償分割、自宅は換価分割、株式は現物分割とそれぞれ異なる方法も採用できます。 

① 現物分割

被相続人の遺産を現状のまま相続人が引き継ぐ方法です。不動産は不動産、株式は株式のまま引き継ぐため、単純に名義変更手続きをするのみで完結します。

② 代償分割

被相続人の特定の遺産を相続人の1人が代表して取得し、取得した財産の価値に見合う金銭(代償金)を他の相続人に支払う方法です。不動産のように現物分割が難しい財産において、検討することが多いです。

③ 換価分割

 被相続人の遺産を売却し、売却代金を各相続人に配分する方法です。換価分割を行う場合は、売却した資産に売却益が発生する場合には、各相続人が所得税の確定申告を行い納税する必要があります。有利不利が出ないように公平に分割したいご意向の場合には検討することが多いです。

④ 共有分割

 共有分割は、不動産を持分に応じて取得する分割方法です。共有状態の不動産については、処分・変更・管理行為を行うのに一定の制約がかかるため、共有者が多くなればなるほど管理・運営が困難になるため、最後の手段として検討すべきです。

1.共有不動産の使用について

 共有状態の不動産については、各共有者が共有持分に応じて使用することができます。例えば、100㎡の土地を相続人A、Bが2分の1ずつ取得した場合、50㎡ずつ半分に区切って所有するというわけではなく、100㎡土地全体をAもBも所有し使用することが出来ます。民法では下記のように規定されております。

第二百四十九条(共有物の使用)
 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

 共有状態の不動産については単独所有の不動産と異なり、他の共有者に損害を与えかねない行為について一定の制限を設けております。そのため、共有持分を保有している1人で出来る行為は保存行為(他の共有者の利益になる行為と考えられるため)に限られており、管理行為や処分・変更行為は他の共有者の同意が必要となります。処分・変更行為は他の共有者全員の同意が必要(民法251条)であり、管理行為は他の共有者の持分権の過半数(民法252条)で決定することになります。他の共有者に与える影響の程度が大きい場合には他の共有者全員の同意、影響が軽微であれば持分権の過半数とされております。

 例えば、賃貸借契約の締結は基本的には変更行為に該当し、共有者全員の同意が必要です。賃料の増額・減額等の賃料変更の合意については、基本的には管理行為に該当し、持分権の過半数による決定が必要とされます。

第二百五十一条(共有物の変更)
 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

第二百五十二条(共有物の管理)
 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。

~以下省略~

2.共有物の分割について

 共有物の場合、民法256条の規定により他の共有者からいつでも分割を請求される可能性があるのも共有のリスクの一つです。その際、共有物の分割についての協議が整わない場合には、その分割を裁判所に請求することができます。(民法258条)

 分割の方法としては、まず現物分割、賠償分割を検討し、共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができるとされております。競売となってしまうと、任意売却より一般的に売却価額は低くなります。

 現物分割は共有状態の不動産をそれぞれの持分に応じて単独所有に分割する方法であるため、建物が共有の場合には現物分割することは困難です。土地の場合には次のようなイメージです。ただし、土地の面積が少ない場合には分割後の面積で住宅を建築出来ない場合には不動産の価格を著しく減少させるおそれがありますので、現物分割は不適格と考えられます。賠償分割は他の共有者の持分を取得する代わりに金銭を支払う方法です。全額金銭で賠償する場合には一定の条件を満たす必要があるとされております。

<現物分割>

3.相続により共有状態となる場合

 相続人より被相続人が所有していた不動産については、遺産分割協議が確定するまでの間は共有状態で各法定相続人が所有することになります。相続が発生してから遺産分割協議が確定するまでの間に発生した収益や費用は各法定相続人が法定相続分に応じて負担することになります。(民法253条)

 不動産が収益不動産の場合には、所得税の確定申告の問題も出てきます。遺産分割協議が確定せず、共有状態が長期化すると、各法定相続人がそれぞれ確定申告をする必要がありますので事務手続きが増加します。賃料債権は、「遺産分割協議が確定したとしても後にされた遺産分割の影響を受けない」(最高裁平成17年9月8日判決判時1913巻62号)と判示しておりますので、不動産の所有者が確定したとしても、過去の確定申告を修正する必要はありません。

賃料は相続人代表口座にまとめて振り込まれることが多いと思いますので、代表相続人から他の相続人へ共有持分相当の金額を支払う必要もあります。

 相続税の申告の点で言うと、遺産が未分割の状態では配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった特例も、原則として相続が発生してから3年10ヶ月以内に遺産分割協議が確定しなければ、適用できません。

<最高裁平成17年9月8日判決要旨>

遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。

4.まとめ

 単独所有と異なり、共有は一つに財産に対して複数の所有者がいるため、管理・運用する上で1人の意見では出来ない行為が出てきます。共有者の意見が全員同じ方向を向いていればいいですが、共有者の1人に相続が発生し、さらに共有者が増えていくと足並みは揃わなくなる可能性も高まってきます。最終的に単独所有の不動産とするためには、共有持分の交換や売買を行う必要が出てきます。一般的に共有状態は望ましくないとされますので、出来る限り単独所有の不動産となるように遺産分割も検討して頂く必要があります。最終的に、相続人の皆様が売却を希望するような場合には、共有で取得してもそれほどのリスクとはならないケースもありますので、不動産の所有形態に悩まれる方は専門家にご相談することをおすすめいたします。

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