宮本税理士事務所

贈与税の非課税制度を活用しましょう。(贈与税の配偶者控除)

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贈与税の非課税制度を活用しましょう。(贈与税の配偶者控除)

贈与税の非課税制度を活用しましょう。(贈与税の配偶者控除)

2023/01/24

婚姻期間が20年以上の配偶者への居住用不動産等の贈与制度

 今回は贈与税の非課税制度のうち、夫婦間で認められた非課税制度をご紹介させて頂きます。相続時にも配偶者は1憶6,000万円と配偶者の法定相続分のいずれか大きい金額までは相続税が課税されないという特例(以下「相続税の配偶者控除」)がございます。また、ご自宅を配偶者を相続すれば、自宅の土地の評価額が330㎡まで80%減額するという特例(以下「小規模宅地等の特例」)もありますので、相続時には配偶者はかなり優遇されております。そうすると、わざわざ贈与税の非課税制度を活用する必要がないとお考えの方もいらっしゃるかと思います。そこで、今回は贈与税の配偶者控除の活用するケースを記載させて頂きます。

制度の内容(相法21の6)

 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できるという特例です。(贈与税の配偶者控除)

<要件>

  1. 婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
  2. 配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。
  3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。

(注1)「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。

(注2) 配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。(参考:国税庁)

 ここでいう婚姻は、婚姻届出を提出した法律上認められた夫婦を意味しますので、内縁関係にある方などに対しては適用できません。婚姻期間の数え方については、婚姻の届出をした日から贈与をした日までの期間により把握します。1年未満の端数は切り捨てされますので、婚姻期間が19年を超え20年未満であるときは、要件を満たしていませんのでご注意ください。

 贈与財産が金銭であれば、贈与をした金額が2,000万円以下であれば問題ないのですが、不動産自体の場合にはその評価額が問題となります。簡便的に評価額を調べるためには土地と家屋について、それぞれ次の資料を確認して頂ければ概算の評価額が計算できます。

【土地】

・国税庁より発表されている路線価こちらを参照

路線価は、土地の価額がおおむね同一と認められる一連の土地が面している路線ごとに評価した1平方メートル当たりの価額です。ご自宅の前面道路の路線価を確認して頂ければ概算の土地の評価額を計算することができます。評価額は以下の算式で計算できます。

<算式>

路線価 × 地積 = 土地の評価額

※ 路線価が定められていない地域については、固定資産税課税明細書に記載の土地の評価額に国税庁が定めている倍率を乗じて計算します。

【家屋】 

・市役所より送付される固定資産税課税明細書

固定資産税課税明細書の評価額の欄の金額がそのまま家屋の評価額となります。間違いやすいのは課税標準の金額を見てしまうことですのでご注意ください。また、固定資産税評価額は共有で所有している場合であっても、単独所有の場合の評価額ですので、共有の場合には持分で按分して頂く必要がございます。

 

 今回は説明を省略致しますが、居住用不動産を売却した場合には、①譲渡金額から②不動産購入費用を差し引いた③譲渡所得(もうけ)の金額から、最大3,000万円が控除出来る制度がございます。この制度は、単独で所有していれば最大3,000万円の控除額ですが、2人で共有している場合には、それぞれ適用が可能ですので、最大6,000万円までの控除が可能となります。あくまで自宅のもうけから

当初から売却を目的とするとこのようなことが可能となるため、それを防止するためにも、「引き続き住む見込み」という要件が付されていると思います。

不動産移転コストについて

 不動産が売買や贈与、相続によって所有権が移転する場合には、所得税や住民税とは別に登録免許税や不動産取得税が課税されます。これらの税金は移転方法によっては非課税となったり、税率が異なり有利不利が生じます。贈与で移転する場合と、相続で移転する場合には次のような違いが生じます。両者はいずれも土地・家屋の固定資産税評価額に税率を乗じて計算します。

<税率>

 不動産取得税は、住宅用の土地・家屋であれば要件を満たせたば軽減措置を受けることが出来るため、記載の通り課税されないケースも多いと思いますので、軽減措置などを考慮していないという前提で記載させて頂いております。

 表を見て頂きますと、不動産取得税も登録免許税も贈与と比較して相続時にはかなり税負担が抑えられることが見て取れると思います。そのため、相続税が課税されないと見込んでいる方については、余分なコストになってしまいますのでこの制度を使うメリットはあまりございません。

活用を検討するケース

 前提としてこの制度が有効な場合は、そのまま自宅を所有していれば相続税が課税されてしまうケースです。そのため、次のような場合にはこの制度を活用するメリットは少なくなります。

  • 相続税が課税されない方
  • 相続時に配偶者控除や小規模宅地等を活用し、結果相続税の負担がない場合
  • 贈与を受ける配偶者の方が財産が多い場合

 

逆にメリットが出る場合としては次のような場合が考えられます。

  • 遺留分や特別受益の対策として活用する場合
  • 贈与を受ける配偶者の財産状況を踏まえて、相続時の相続税率の差を活用できる場合

 

 1つ目は通常の贈与であれば、生前贈与した財産も特別受益として相続財産に加算して各相続人の具体的な相続分が計算されます。生前贈与財産は相続財産の前渡しということなりますので、生前贈与はなかったものとして被相続人の財産に足し戻すことになります。そして生前贈与を受けた金額が多い受贈者については、相続時には法律的には取得出来る財産額が少なくなってしまいます。しかし、税法上の非課税制度を活用した場合には、相続時に足し戻しをする必要はありません。そのため、相続時に配偶者がより多くの財産を取得することが可能となります。相続人の方が相続分や遺留分など、法律上定められている権利を主張される場合などでも、配偶者に多くの財産を渡していきたいというご意向の場合には、有効だと思います。

 

 2つ目は、例えば自宅を所有している人が総額で3憶円程度、配偶者が1憶円程度の財産を所有している場合などが該当します。

具体的には次のような場合です。

【前提】

夫:財産3億円

妻:財産1憶円

子供1人

<現状の相続税額・相続税率>

この財産状況及び家族構成を前提に相続税を計算すると、夫の相続時には相続税6,920万円、妻の相続時には1,220万円、合計8,140万円の相続税負担となります。この前提でいくと、夫の相続時には相続税率は40%、妻の相続時には相続税率は30%で計算します。

【贈与後の前提】

夫:財産2億8,000万円

妻:財産1憶2,000万円

子供1人

<贈与後の相続税額・相続税率>

贈与後の場合には、夫の相続時には相続税6,120万円、妻の相続時には1,820万円、合計7,940万円の相続税負担となります。贈与前と比較すると、贈与した金額2,000万円と税率の差10%分の200万円だけ税負担が少なくなります。このように税率の差によって、結果相続税の負担を軽減する可能性はあります。

あくまで一例ですので、不動産取得税や登録免許税、その他の要因も検討していくと、メリットが出ないことも考えられますので、適用するには慎重な判断が必要となります。

まとめ

 贈与税の配偶者控除は、現状認識も重要です。また、贈与を受けた配偶者の財産状況などを総合的に考慮して判断するのが通常です。この制度を活用していくためには、要件を満たすのは当然ですが、必ず贈与税の申告が必要となります。申告しないと贈与税が課税され、多大な贈与税負担が生じてしまうリスクがあります。そのため、適用を検討される方は、税理士など専門家の意見を伺った上で適用を検討していくのが望ましいかと思います。

他の非課税の制度については、ご興味があれば下記の記事をご参照して頂ければ幸いです。

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