宮本税理士事務所

令和5年税制改正大綱により、相続開始前の生前贈与の取扱いが改正されました。

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令和5年税制改正大綱により、相続開始前の生前贈与の取扱いが改正されました。

令和5年税制改正大綱により、相続開始前の生前贈与の取扱いが改正されました。【暦年課税】

2022/12/20

 令和4年12月16日付で公表されました令和5年度税制改正大綱の中に記載の生前に贈与があった場合の相続時の取扱いについて、今後の相続実務が大きく変わっていくことが見込まれます。そこで、対象となる改正内容をご紹介させて頂きます。

生前贈与の取扱いについて

 

 改正内容のご説明の前に、お亡くなりになった方(被相続人)が生前に行っていた生前贈与の内容について、確認していきたいと思います。

相続が発生しますと、被相続人が所有しておりました財産的価値があり、金額で表すことが出来るものが相続税の対象となる財産となります。

一般的には不動産・有価証券等・現金預金・貴金属等といった換金価値があるものは全て相続税の申告の対象となります。また、相続税額を計算する時点を確定する必要がありますが、相続税の申告は「相続、遺贈等により財産を取得した日」時点の財産額を申告する必要があります。したがって、被相続人の相続開始時(亡くなった日)時点に所有している財産を申告する必要があります。

 少し話は変わりますが相続税法には相続税と贈与税の両方が規定されており、贈与税法という法律はございません。そして相続税法の中における贈与税は相続税を補完する役割があると言われております。仮に贈与税が無ければ、生前に財産の大半を、無税でお子様に贈与することが可能となり相続税が実質的に無意味となってしまいます。しかし贈与税の規定があるため、贈与での財産の承継は一部に限られることが大半であるため、結果として相続税が課税されるということになります。

そこで問題となるのが、相続開始時点で所有している財産だけを申告すればそれで問題ないのかという点です。

 結論から申し上げますと、相続開始時点で所有されている財産だけではなく、生前贈与した財産ついても相続税の申告の際には足し戻して申告する必要があります。では、生前贈与した財産について全て相続時に相続税の申告に足し戻す必要があるのかというと、そうではございません。

相続税法では足し戻す期間が定められており、その足し戻しをする加算期間に改正が入りました。

生前贈与加算期間が3年から7年に

 

 これまでに述べたように、生前贈与については、相続財産に足し戻して申告する必要がありますが、相続税法では以下のように規定されております。

相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)に暦年課税に係る贈与によって取得した財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算します。

 よって、お亡くなりになる前3年以内にされた生前贈与については、相続税の申告上、加算した上で申告することになります。

例えば、毎年100万円ずつ贈与されていた方については、300万円は相続時に足し戻すということになります。

今回の改正により足し戻す期間が3年間から7年間に延長されことになりました。(令和6年1月1日以後贈与により取得する財産が対象です)

また、、税制改正により3年間から7年間に延長された4年間の間で受けた贈与については、4年間の贈与金額の合計額のうち、100万円については加算しない取扱いが新たに設けられました。

具体的にみていきますと、令和13年に相続が発生するまで毎年100万円ずつ贈与してきた場合には、下記の通りとなります。

  延長された4年間 相続開始前3年以内
贈与年 令和6年 令和7年 令和8年 令和9年

令和10年

令和11年

令和12年
贈与金額 100万円 100万円 100万円 100万円 100万円 100万円 100万円
加算金額 400万円ー100万円=300万円

300万円

 

上記の表を見て頂ければ分かりますとおり、相続開始前3年以内の生前贈与はこれまでどおりと変更はありませんが、同じ毎年100万円ずつ贈与であっても相続財産に加算される金額が改正前300万円から改正後600万円に増加することが分かります。

暦年贈与と相続時精算課税制度について

 贈与の種類の補足ですが、上記の「暦年課税に係る贈与」とは、贈与税の課税方法の一つであり、110万円までが基礎控除となっている原則的な贈与の課税方法となります。

もう一つの贈与税の課税制度として「相続時精算課税制度」という制度がありますが、適用するにはいくつか要件があり、特例的な制度となります。

 税務署に対して届出書を提出していなければ、「暦年課税に係る贈与」となります。今回ご紹介しているのは「暦年贈与加算制度」です。相続時精算課税制度は別の記事でご紹介しております。

改正の影響

 

 今回の改正によって、相続税の実務では生前贈与の有無の確認をこれまで以上に過去に遡って行う必要があります。

生前贈与の有無の確認については、次の方法で行うことが一般的だと思います。ここでは金銭贈与を前提としおります。

  1. お客様からのヒアリング
  2. 預金通帳の確認
  3. 贈与契約書の有無
  4. 贈与税申告書の有無
  5. 贈与税の申告内容の開示請求手続

 

 しかし、親族間で贈与契約書を作成されている方もまだ多いとは言えず、契約書が無い場合も多いです。贈与税の申告書の有無の確認や税務署への開示請求手続については、税務署に贈与税の申告書を提出していることが前提となりますので、そもそも基礎控除の110万円の範囲内でされている方については、ヒアリングして伺うか預金通帳で確認するしか方法はございません。

 これまでは3年間の生前贈与の有無の確認で済んでいたところ7年間に延長されたことによって、預金通帳の内容を確認する期間も7年間は確認する必要が出てきたり、生前に贈与で財産をもらったことを忘れてしまうことも考えられます。

 これからの対応としては、贈与の記録をしっかりと残して置くことがこれまで以上に大事になってくることが考えられますので、贈与契約書をきちんと作成して保管して置く、預金通帳も繰越済通帳や解約済通帳も含めてきちんと保管して頂くことが大事かと思います。

 生前贈与は、きちんと手続きをしておかないと後々税務署に否認を受ける可能性もありますので、ご不安な方は一度専門家にご相談されることをお勧めします。改正の影響を受けない方法で生前贈与を行うことも可能な場合もあります。

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