宮本税理士事務所

不動産の購入時点の資料が無い場合の譲渡所得税の計算は?

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不動産の購入時点の資料が無い場合の譲渡所得税の計算は?

不動産の購入時点の資料が無い場合の譲渡所得税の計算は?

2024/02/09

 相続税の申告の仕事を多くしていると、不動産の売却のお話が出ること多いです。過去にご紹介をしたこともありますが、不動産の売却は①売却価格から②購入費用及び譲渡経費をマイナスした③所得金額に対して所得税・住民税(以下「所得税等」)が課税されます。

<算式>

 ①売却価格 - (②購入費用+譲渡経費) = ③譲渡所得金額

売却価格は、現在時点のお話ですので資料を紛失するケースは稀だと思いますし、不動産会社へ照会すれば把握することは難しくないと思います。一方、先祖代々相続で承継してきた不動産の購入時点の資料となると、手許に資料が残っていない方も多いです。

 この場合、上記②の購入費用の金額が分からないので高額の所得税等が発生すると思われている方もいらっしゃると思います。今回は不動産の売却の際、購入時の資料が無い場合にどのような対応をするのかをご紹介したいと思います。

1.概算取得費について

 概算取得費は、購入費用が分からない場合には、売却金額の5%を取得費とみなして譲渡所得を計算する方法です。こちらは、租税特別措置法第31条の4にも記載がある通り法的に認められている方法となりますので、実際の購入金額が分からない場合には、こちらの規定を適用することとなります。

具体的に計算例を挙げると、次のように計算していきます。

【具体例】

〇売却価格5,000万円、購入時の資料無し、譲渡経費200万円

 {5,000万円 -(5,000万円×5%+200万円)}× ※20.315% ≒924万円(譲渡所得税等)

 ※長期保有の場合、(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)

 このように、概算取得費の場合には売却金額のおおよそ約2割の金額が所得税等として支払う必要が出て参ります。購入時の資料として、残して置きたい資料を例示すると次のような資料となります。

下記以外にも購入時に何か支払った費用があれば残しておけば損することは無いので、これから不動産を購入される方は、売却のことも考慮して資料を保管しておきましょう。

〇残しておきたい購入時の資料

  • 不動産売買契約書
  • 建物建築請負契約書等(建物の建築金額が分かる資料)
  • 領収書
  • 抵当権設定登記費用
  • 不動産取得税の支払通知書
  • 不動産会社へ支払った仲介手数料の領収書
  • 登記に要した費用
  • 土地の測量費用や境界確定費用

 購入してそれほど時間が経過していなければ、購入元の不動産会社にお問い合わせすれば資料が残っている可能性もありますので、確認しておきましょう。

2.取得費を推定する場合

 購入費用は、あくまで実際に支払った金額を計上すべきですので、購入金額を推定する方法は必ずしも認められる方法では無いということを前提に見て頂ければ幸いです。

 建物の建築費が分からない場合には、国税庁が公表している令和5年分「譲渡所得の申告のしかた」のP41にも記載があるように、標準的な建築費を床面積で乗じて概算の建物取得価格を求める方法も選択肢の一つとして考えられます。しかし、この「建物の標準的な建築価額表」は、譲渡所得の計算を行うに当たり、土地と建物を一括で取得しており取得時の契約においてそれぞれの価額が区分されていないなどのため、建物の取得価額が不明なときに、土地と建物の価額の区分の一方法として、建物の取得価額を算定するために使用するものとされております。リンク先→令和5年譲渡所得の申告のしかた

 次に土地の購入金額が不明なケースです。この場合には、当時の地価水準から推定していくことになります。当時の地価水準の把握の仕方としては、次のような方法が考えられます。

〇地価水準の把握方法

  • 取得当時の公示価格、相続税路線価等をによる把握

 古い路線価図等については、インターネットで確認することは出来ないため図書館等で確認する必要があります。図書館によって保管している資料は異なりますので、直接行かれる際には事前に電話確認等をしておく必要があります。

不動産鑑定士による鑑定評価

 不動産の経済的利益の判定のプロである不動産鑑定士による鑑定評価を活用する方法もあります。ただし、購入時点が古すぎると鑑定評価が不可能の場合もありますので、一つの規準として昭和50年よりも以前に購入している場合には鑑定評価が難しい可能性が高いと思います。また、不動産鑑定士への支払いも発生しますので、費用対効果を考慮してご依頼する必要があります。

  • 市街地価格指数による推計

 一般財団法人日本不動産研究所という機関が発表している「市街地価格指数」という資料に基づき当時の取得費を推定する方法です。過去に裁決の中でこの指数に基づき当時の取得費を推定する方法は合理的と判断された経緯があります。近年では、この方法を使用した方法も認められない場合も見受けられますので、あまりお勧めではないです。

3.まとめ

 不動産の売却を検討する際には、購入時の資料を残しておくことは必須です。原則的には、購入時の支払金額を取得費として認識しますが、分からない場合には上記1.の概算取得費で申告するのが条文で規定された方法となります。上記2.の取得費を推定する方法は税務署に認められない可能性もありますので、税務署から否認されたリスク(過少申告加算税や延滞税リスク)を十分に認識してご判断頂く必要があります。また、宅地を前提に記載させて頂いておりますので、山林や農地の場合には適用出来ないこともありますので、ご留意ください。確定申告時期になってからでは十分な対応が出来ないこともありますので、購入時の金額が不明な場合には、お早めに税理士等にご相談頂くことをお勧めします。

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