配偶者が遺産を相続する場合、必ず配偶者の財産状況も確認しましょう!
2023/05/01
相続税の申告はどのように遺産を分けるかによって、支払う相続税額が変わってきます。ご夫婦のうち、どちらか片方が最初にお亡くなりになり、配偶者と子供が相続人となるようなご相続を「一次相続」、次に「一次相続」で相続人であった配偶者がお亡くなりになり、子供のみが相続人となるような相続を「二次相続」といいます。「一次相続」の際には、配偶者が財産を取得した場合には、一定の金額まで相続税額が無税となる特例があります。この特例を活用することで、「一次相続」の際、相続税額を0とすることは可能です。
しかし、この特例を活用するには落とし穴もありますので、今回は配偶者の特例の活用について記載していきたいと思います。
【目次】
配偶者の特例とは?
相続税法には、配偶者の今後の生活を守る趣旨から、配偶者が取得する財産については大幅に相続税額を減額する特例があります。これを「配偶者の税額軽減」といいます。減額される相続税額には限度額があり、無制限に減額されませんのでご注意ください。
<配偶者の税額軽減の限度額>
配偶者が取得する次のいずれか多い財産額までは、配偶者には相続税額がかかりません。
①1憶6,000万円
②配偶者の法定相続分 (具体的には下記表を参照)
法定相続人 | 配偶者の 法定相続分 |
---|---|
配偶者のみ | 1 |
配偶者と子供 | 1/2 |
配偶者と父母 | 2/3 |
配偶者と兄弟姉妹 | 3/4 |
被相続人の財産額によって、減額される金額は異なりますので、ケース別に見ていきたいと思います。
<ケース1>
■前提条件
・被相続人の財産額2憶円
・配偶者の法定相続分(1/2)
配偶者の法定相続分が1/2ですので、被相続人の財産額2憶円の半分1憶円と、1憶6,000万円のいずれか多い金額まで特例の対象となります。この場合には、1憶6,000万円まで配偶者が遺産を取得しても相続税額は発生しません。
<ケース2>
■前提条件
・被相続人の財産額5憶円
・配偶者の法定相続分(1/2)
ケース2では、配偶者の法定相続分相当額は5億円の半分の2憶5,000万円と、1憶6,000万円の比較になりますので、2憶5,000万円まで配偶者が遺産を取得しても相続税額は発生しません。
配偶者の税額軽減の要件
配偶者の税額軽減は、相続税額の負担を大きく減額することが出来ますので、適用するためには一定の要件を満たす必要があります。しかし、要件を満たしていても配偶者の税額軽減の適用を受けないで「一次相続」の相続税の申告する方が有利な場合もあります。具体的には、下記に記載の具体例をご参照下さい。
要件① 遺産分割協議の確定
この特例を適用するためには、相続税の申告期限(相続開始日から10ヶ月)までの間に遺産分割協議が確定しないと適用を受けることができません。ご相続人の間で遺産分割協議がまとまらず、取得者が決まらない場合には、相続税の申告期限までの間に法定相続分に応じて仮申告及び納税する必要があります。
しかし申告期限までに分割されなかった財産についても、申告期限から3年以内に遺産分割が確定したときは、配偶者の税額軽減の対象になります。仮申告時には配偶者の税額軽減の適用を受けないで相続税額を計算しますので、遺産分割協議が確定した場合には配偶者の税額軽減を適用した上で相続税額を再計算し、相続税の還付を受ける手続き(更正の請求)をすることにより払い過ぎた相続税額は還付されます。不動産の保有割合が大きく、納税資金が不足している場合等には、仮申告時に納税が出来るかどうか注意が必要となります。
なお、相続税の申告期限から3年を経過する日までに分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合で、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割されたときも、税額軽減の対象になります。
要件② 隠蔽・仮装した財産には適用がない
隠蔽・仮装した財産についてはこの特例は適用されませんので、意図的に財産を隠して申告した場合、税務調査でその隠蔽した財産が発覚すると、新たに発覚した財産にはこの特例が適用されないことになりますので、正しく申告しておきましょう。税務調査の際に、虚偽の発言をしてその後財産が発覚する場合も同様に取り扱われることになります。
要件③ 相続税申告書の提出
配偶者の税額軽減の適用を受ける場合には、相続税申告書の申告書の提出義務がありますので、忘れずに申告しましょう。
配偶者の財産状況を確認しましょう!
配偶者の税額軽減を適用する上では、ここが一番重要となります。冒頭で記載させて頂きましたが、「一次相続」ではこの配偶者の税額軽減の適用を活用すれば相続税の負担は抑えることは可能ですが、次の「二次相続」の際には「一次相続」で引継いだ財産と配偶者が元々保有していた財産の両方に相続税が課税されますので、多額の相続税額が発生してしまう可能性があります。そうならないためにも、配偶者の財産状況を確認することは必須です。具体的に金額で見ていくと、イメージしやすいと思います。
ケース① 配偶者の保有財産が1,000万円の場合
<前提条件>
■被相続人の財産額 1億円
■家族構成 配偶者と子供2人
■配偶者の保有財産額 1,000万円(増減はないものと仮定します)
上記前提条で、法定相続分通りの遺産分割した場合と、それ以外の遺産分割をした場合を比較すると次のようになります。
配偶者の遺産取得割合 |
一次相続 相続税額 |
二次相続 相続税額 |
納付税額 合計 |
① 配偶者が法定相続分通り(50%)取得した場合 |
315万円 |
180万円 | 495万円 |
② 配偶者が何も遺産を取得しない場合 | 630万円 | 0円 | 630万円 |
③ 配偶者が全額遺産を取得した場合 | 0円 | 960万円 | 960万円 |
④ 配偶者が遺産の30%を取得した場合 | 441万円 | 0円 | 441万円 |
上記表を見て頂くと、配偶者の特例を最も活用した③が次の二次相続を踏まえると、納付する相続税額が最も大きくなるという結果になります。今回の前提条件でいくと、一次相続と二次相続を合計したトータルの納付する相続税額が最も少なくなるのは、④の配偶者が遺産の30%を取得する場合が最も有利となります。
ケース② 配偶者の保有財産が5,000万円の場合
<前提条件>
■被相続人の財産額 1億円
■家族構成 配偶者と子供2人
■配偶者の保有財産額 5,000万円(増減はないものと仮定します)
上記前提条で、法定相続分通りの遺産分割した場合と、それ以外の遺産分割をした場合を比較すると次のようになります。
配偶者の遺産取得割合 |
一次相続 相続税額 |
二次相続 相続税額 |
納付税額 合計 |
① 配偶者が法定相続分通り(50%)取得した場合 |
315万円 |
770万円 | 1,085万円 |
② 配偶者が何も遺産を取得しない場合 | 630万円 | 80万円 | 710万円 |
③ 配偶者が全額遺産を取得した場合 | 0円 | 1,840万円 | 1,840万円 |
④ 配偶者が遺産の30%を取得した場合 | 441万円 | 470万円 | 911万円 |
ケース2では、配偶者の保有財産のみ条件変更しております。それ以外の配偶者の遺産取得割合は同じ条件です。配偶者が全額遺産を取得した場合の③が納付税額が最も大きくなる点はケース①と共通しております。しかし、配偶者の元々保有している財産額が多ければ、次の「二次相続」で課税される相続税が多く、結果としてケース②では②の配偶者が何も遺産を取得しないことが最も有利なケースとなります。
上記の2つの例で見て頂いたように、配偶者の保有財産額によっては、配偶者が一部遺産を取得した方が望ましい場合や、配偶者が何も取得しないことが望ましいケースもあります。この配偶者の財産状況を確認せずに、安易に配偶者の税額軽減を適用して申告すると、結果多くの相続税額を負担する可能性がありますので注意しましょう。
まとめ
配偶者の税額軽減については、非常に税効果が高い特例措置であるのは間違いありません。この制度を上手く活用するためには、二次相続が発生するまでの間にどれだけ遺産を減らすことが出来るのかがポイントとなります。
今回記載させて頂きました2つの例は、配偶者の財産が「一次相続」から変動がない前提で記載させて頂いております。今後、配偶者の方が生活されていく中で、年金収入等の金額と、生活費等で消費していく金額を勘案し、お金が増えていく可能性が高いのか、減っていく可能性が高いのかによっても「一次相続」で取得する遺産の金額は異なってきます。収入があまりなく、支出の方が多い場合には財産が減少傾向にあると考え「一次相続」では少し多めに遺産を取得し、「配偶者の税額軽減」を活用して「一次相続」の相続税額を少なくするという選択もあります。
また、遺産を取得した後にお孫様等への生前贈与やその他贈与税の非課税制度を活用することで「二次相続」の相続税負担を減らす生前対策を行うことも有効です。
生前対策は誤った方法で行うと、相続税の申告時には結果として相続対策になっていないケースもよく見受けられます。
特に生前贈与は日常どこでも起こり得るお話ですが、あまり贈与の認識を持たれておらず、贈与税の申告もされていない方も多いのではないかと思います。無償で金銭の授受があれば贈与に該当しますし、配偶者の方へ生活費としてお金を渡す行為も贈与となります。ただし、生活費として使い切る金額については、贈与税の非課税に該当するため、問題ありません。問題が生じるのは、専業主婦の配偶者が生活費以上の金額を受取り、それを貯蓄しているケース等です。このような場合には、通常「名義預金」として相続税が課税されてしまうのが原則的な取扱いです。
「名義預金」については下記の記事をご参照頂ければ幸いです。この「名義預金」に該当しないよう贈与の成立要件を満たすように準備しておきましょう。
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