確定申告することで社会保険等が増加する可能性がありますので注意が必要です。
2023/03/08
たまたま不動産を売却して所得が出てしまう場合など臨時的な収入が入ると、所得税・住民税はもちろん、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料、医療費負担割合などに影響する可能性があります。確定申告する場合には、これらの影響を把握したうえで申告することが望ましいので、国民健康保険料に与える影響について記載したいと思います。
マイホームを売却した場合(3,000万円控除適用あり)
前提として、ご自宅を売却した場合を考えていきます。ご自宅を売却した場合には、要件を満たす場合には譲渡所得金額について3,000万円までの特別控除が適用されます。具体的な数値で見ていくと次の通りです。
①譲渡代金5,000万円 - ②購入金額2,000万円 - ③特別控除3,000万円 =0円
この場合、所得金額は生じないため所得税・住民税の負担はありませんが、上記③特別控除の取扱いについて、控除前か控除後で大きく所得金額が異なりますので、どちらの金額を使用するのか注意が必要です。所得税や住民税の計算はこの特別控除後の金額で計算しますが、扶養控除や配偶者控除、寡婦控除、基礎控除等の判定で使用する合計所得金額(繰越損失控除前)は控除前で判定します。住民税の均等割の非課税についてもこの合計所得金額で判断します。
特別控除の適用を受けることが出来れば、所得税・住民税・国民健康保険料の金額を抑えることが出来ますが、適用がない場合には多額の負担となることが想定されますのでご注意ください。
合計所得金額とよく似た言葉で「総所得金額等」がありますが、これは合計所得金額に下記の繰越控除を適用した後の金額をいいます。
●純損失や雑損失の繰越控除
●居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除
●特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
●上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
●特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除
●先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除
国民健康保険への影響
国民健康保険料の計算方法については、①所得割、②均等割、③平等割に区分されております。
①所得割とは前年中の所得金額に応じて負担する保険料です。前年中の「総所得金額等」から43万円の控除額を差し引いた金額に保険料率をかけて計算します。
住民税の基礎控除は所得金額が2,400万円以下は43万円それを超える場合には金額が異なりますのでご留意ください。(地方税法314条の2第2項)
<算式>
総所得金額等 - 住民税の基礎控除(43万円) = 基準総所得金額等
②均等割は世帯あたりの国民健康保険加入者の人数に応じて、均等に負担する保険料です。
③平等割は国民健康保険に加入する全世帯が、平等に負担する保険料です。
所得割の計算で必要となる総所得金額等とは、不動産を譲渡した際に特別控除の適用を受ける場合には、控除後の金額となります。
話は少し変わるのですが、上場株式等を譲渡した際に譲渡損失が発生した場合には、譲渡損失を翌年以降3年間繰越すことが出来ます。
この場合には、翌年以降に株式を譲渡した場合に譲渡益が発生した場合、譲渡損失と譲渡益の通算することができます。譲渡損益を通算する場合の国民健康保険料の計算は、通算後の金額で総所得金額等を計算します。例えば、昨年に500万円の譲渡損失の金額を繰越し、今年①300万円の譲渡益、②700万円の譲渡益が出た場合では総所得金額等の金額は異なります。
① 譲渡益 300万円 - 繰越損失 300万円 = 0円(影響なし)
② 譲渡益 700万円 - 繰越損失 500万円 = 200万円(総所得金額等に該当)
上記の②の場合には、国民健康保険料の金額にも影響しますので、繰越の金額が少額でその年の譲渡益の金額が多額の場合には、所得税の影響以上に国民健康保険料の金額が上昇する可能性がありますので注意が必要です。
まとめ
国民健康保険に加入されている方への影響を記載させて頂いておりますが、後期高齢者医療保険料の金額についても同様のお話が出て参ります。また、70歳以上の方については医療費負担割合も所得金額によっても異なります。特例の適用がない場合には、医療費負担も3割負担となることもあります。
不動産や株式を売却した場合に所得が出れば確定申告しなければなりませんのでやむを得ない場合もあるとは思いますが、可能な限り所得を少なくした上で通常は申告します。特例の適用もれがないように事前に該当するものがないかよく確認した上で、申告するようにしましょう。
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