贈与税の非課税制度を活用しましょう。(住宅取得資金の贈与)
2023/01/24
贈与税の非課税制度の概要
贈与税の非課税の制度については、税制改正によって少しずつ要件が細かくなっている傾向がございます。そのため、しっかりと要件を事前に確認した上で贈与を実行して頂く必要があります。
非課税制度はいくつか種類があります。下記に、贈与に非課税の代表的な内容を記載しておりますので、ご参考にして頂ければ幸いです。
<贈与税の非課税制度>
- 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
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直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税
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直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(措法70の2)
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直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税
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贈与税の配偶者控除(婚姻期間が20年以上)
今回は、贈与税の非課税制度のうち、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の内容をご説明させて頂きます。教育資金等の贈与の非課税措置、贈与税の配偶者控除についてはこのページの末尾のリンク先の記事をご参照ください。
制度の概要について
この制度は、父母や祖父母などの直系尊属から居住用の家屋の新築、取得、増改築等に充てるために金銭の贈与を受けた場合には、次の住宅用の家屋の種類に応じて非課税となる金額が異なります。この非課税枠については受贈者ごとに定められた限度額ですので、祖父母からそれぞれ金銭をもらった場合でも、非課税限度額が増えることはございません。
つまり、受贈者ごとに限度額が定められております。現在は令和5年12月31日までの措置ですが、税制改正によって延長されてきた規定ですので、再度延長される可能性は高いかと思います。
<非課税限度額>
贈与を受けた時期 | ※省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
---|---|---|
令和4年1月1日から
令和5年12月31日まで | 1,000万円 | 500万円 |
※ 省エネ等住宅
省エネ等住宅とは、省エネ等基準(①断熱等性能等級4以上若しくは一次エネルギー消費量等級 4以上であること、②耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上若しくは免震建築物であること又 は③高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であることをいいます。)に適合する住宅用の家屋 であることにつき、次のAからFのいずれかの証明書などを贈与税の申告書に添付することにより証明がされたものをいいます。
- ①「断熱等性能等級」とは品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に規定された省エネ性能を表す等級のことを示したものであり、国土交通省が制定しております。この等級が高いほどが外気の温度が室内に伝わりにくくなり、断熱性能に優れた住宅といえます。
- ②「耐震等級」とは地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさを表しております。耐震等級は等級1から等級3まであり、等級1が建築基準法の耐震性能を満たす水準であり、耐震等級2は耐震等級1の1.25倍、耐震等級3は1.5倍の耐震性能がある建物と位置付けられますので、耐震性能が優れている住宅といえます。
- ③「高齢者等配慮対策等級」は等級は、移動時の安全性に配慮した処置の程度と介助の容易性に配慮した処置の程度を組み合わせて判断されます。等級3は高齢者が安全に異動するための基本的措置が講じられており、介助用車いす使用者が基本的な生活行為を行うための基本的な措置が講じられているとされております。具体的には、床を段差のない構造としたり廊下などの通路を広くするなどの措置が該当します。
省エネ等住宅は、断熱性や耐震性に優れた住宅やバリアフリー化された住宅など、機能が標準的な住宅と比較して優れた住宅です。このような住宅については税制上も優遇措置が施されており、非課税限度額が大きくなっております。
<証明書の種類>
A 住宅性能証明書
B 建設住宅性能評価書の写し
C 住宅省エネルギー性能証明書
D ①長期優良住宅建築等計画等の(変更)認定通知書 の写し 及び ②住宅用家屋証明書(若しくはその写し)又は 認定長期優良住宅建築証明書
E ①低炭素建築物新築等計画の(変更)認定通知書 の写し 及び ②住宅用家屋証明書(若しくはその写し)又は 認定低炭素住宅建築証明書
F 増改築等工事証明書(省エネ等住宅の基準に適合させるためのもの)
※ 各種証明書の発行については、購入をされる際に不動産業者の方へお問い合わせください。
受贈者等の要件
この制度を受けるためには、贈与者は父母や祖父母などの直系尊属である必要がありますが、贈与で金銭をもらう受贈者や購入する不動産について次に掲げるような要件がございます。
<受贈者等の要件>
- 贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること。
- 贈与を受けた時に、日本国内に住所を有し、かつ、日本国籍を有していること。
- 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額2,000万円以下 (新築等をした住宅 用の家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満である場合は 1,000万円以下)であること。
- 平成21年分から令和3年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の贈与を受けた場合 の贈与税の非課税」の (以下、この期間の「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の制度を「旧非課税制度」といいます。)。ざっくりいうと、初めてこの制度の適用を受けること。
- 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋を取得したものではないこと、又はこれらの人との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものでは ないこと。
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。(先に金銭をもらう必要があります)
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること 又は同日後遅滞なくその居住することが確実であると見込まれること。
※受贈者が「住宅用の家屋」を所有する(共有持分を有する場合も含まれます。)ことにならない場合は、この非課税制度の適用を受けることはできません。これは、土地のみを取得する場合には、この制度が適用出来ないことを意味しております。住宅用土地を先行して取得し、後日家屋を建てる場合には要件を満たしております。具体的には家屋の登記名義人の中に受贈者を含めて頂く必要があります。
ひとつ補足させて頂きますと、7.居住することが確実であると見込まれる場合には、住んでいないにもかかわらず非課税とするわけにもいきませんので、居住するまでの期間が設けられております。それは贈与年の翌年12月31日までに居住して頂く必要がございますので、居住出来なかった場合には修正申告をすることとなり、贈与税が課税されますのでご注意ください。
住宅用の家屋の新築等の要件
「住宅用の家屋の新築」には、その新築とともにするその敷地の用に供される土地等又は住宅用の家屋の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含み、「住宅用の家屋の取得又は増改築等」には、その住宅用の家屋の取得又は増改築等とともにするその敷地の用に供される土地等の取得を含みます。対象となる住宅用の家屋は、日本国内にあるものに限られます。
<新築等の要件>
- 新築又は取得をした住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物 の場合はその専有部分の床面積)が 40㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の 2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。
- 取得をした住宅用の家屋が次のいずれかに該当するものであること。
① 建築後使用されたことのない住宅用の家屋(新築)
② 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、昭和57年1月1日以後に建築されたもの(中古)
③ 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、次のいずれかの書類により証明がされたもの
<証明書類>
a 耐震基準適合証明書
b 建設住宅性能評価書の写し(耐震等級に係る評価が等級1、2又は3であるもの)
c 既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類
④ 上記②及び③のいずれにも該当しない建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、その住宅用の家屋の取得の日までに同日以後その住宅用の家屋の耐震改修を行うことにつき、次に掲げる申請書等に基づいて都道府県知事などに申請をし、かつ、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその耐震改修によりその住宅用の家屋が耐震基準に適合することとなったことにつき、一定の証明書等により証明がされたもの
<増改築等の要件>
- 増改築等をした後の住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物 の場合はその専有部分の床面積)が40㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。
- 増改築等の工事が、自己が所有し、かつ、居住している家屋に対して行われたもので、 一定の工事に該当することについて次のいずれかの書類により証明がされたものであること。
<証明書類>
①確認済証の写し
②検査済証の写し
③増改築等工事証明書
- 増改築等に係る工事に要した費用の額が100万円以上であること。 また、増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上が、自己の居住の用に供される部分の工事に要したものであること。
対象となる不動産は新築のほか、中古住宅や増改築の場合も含まれます。特に新築の場合に留意して頂きたいのは、贈与の翌年3月15日までに建物が完成しておく必要がありますので、建築スケジュールが遅延して期限までに完成していない場合には、非課税の適用要件を満たせず、贈与税が課税されてしまいます。このように失敗しないためにも、ゆとりをもった期間設定が必要となります。
ここでいう新築には、新築に準ずる状態も含まれます。これは、屋根(その骨組みを含む。)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以後の状態とされております。つまり、屋根まで完成していれば、引渡しがなくても要件を満たすことになります。
まとめ
非課税金額は基礎控除額とは別枠で設けられておりますので、暦年課税制度の場合には最大1,100万円又は610万円までは贈与税が課税されません。ただし、非課税制度を活用するためには、必ず提出期間内に税務署への贈与税の申告書及び添付資料の提出が必要となります。申告を失念してしまいますと、後日贈与税が課税されてしまいますので、3月15日までに贈与税の申告書を忘れずに提出しておきましょう。
この他の贈与の非課税制度について、ご興味があれば下記の記事をご参照頂ければ幸いです。
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