将来の相続に向けて今やっておくべきことは?
2023/04/18
相続が発生した際に、相続人の方には様々なご負担がございます。まずはご相続が発生してから7日以内に死亡届・火葬許可書の提出、通夜・葬儀に始まり年金受給停止手続き・遺族年金・未支給年金の請求手続きなど、様々な手続きが発生致します。このほか、お亡くなりになられた方の各財産について、名義変更手続きや解約手続き等も必要となります。当たり前のことですが、お取引先の金融機関が多ければ多いほどご相続人の方の事務的な負担が重く大変な作業となってしまいます。
相続人の方の負担を少なくすることも一つの相続対策となります。せっかく遺産を遺されるのであればスムーズに遺産の承継が出来ればご相続人の方も喜ばれると思います。
今回は、相続時の手続きのことを踏まえて、今やっておいた方が望ましいことを記載させて頂きます。皆様の状況によっては必ずしも該当しないケースもあると思いますので、その点は臨機応変にご対応頂きますようお願い致します。
【目次】
1.財産一覧の作成やエンディングノートの活用
ご相続を経験された方の中には、生前にもっと色々と聞いておけば良かったというようなお話や、「どこに何があるか分からない」といったことでお困りになられたことはないでしょうか。
財産のお話をお子様や配偶者へ全て話してしまうのは抵抗があるとお考えの方や、まだまだ元気なので今はまだ知らせる必要がないといったご意向もあるかと思います。財産の金額を知らせる必要性まではないと個人的に思いますが、メモでも結構ですので、財産の一覧を作成しておくことが望ましいです。
決まりはないので自由に記載して頂いて問題ないのですが、次の内容はご相続の際に参考になるかと思いますので、記載して頂きたい内容です。
財産一覧記載例
- 取引先金融機関名・支店名・口座番号・預金の種類
※ 特にネットバンクやネット証券など、通帳や書類がない場合は必ず記載
- 生命保険契約等の保険会社名・証券番号・被保険者名・保険金受取人等
- 所有不動産(共有も含む)全ての所在地、権利証・購入時の契約書の保管場所等
※ 賃貸物件の場合は、賃貸借契約書の有無等
- 上場されていない会社の所有株式数
- 暗号資産(仮想通貨)の種類・暗号資産交換業者の名称等
- ゴルフ会員権やリゾート会員権の種類、預託金の金額等
- 貸付の相手先・金額
- 高価な貴金属・書画・骨とう品の購入金額
- 借入先の金融機関名・支店名・借入残額等
- 保証人・連帯保証人の有無
財産一覧を作成する目的は、相続が発生した際の財産調査をする手間を省くことにあります。財産一覧を作成した日付を記載しておき、年に1回程度財産状況を見直して頂き、財産状況に変更があれば更新して最新の財産状況にしておくことで相続人が簡単に財産の所在を確認することが出来ます。防犯上、大事なものは色々なところに分けて管理されている方もいらっしゃるかと思いますので、相続後に家探しをする必要がないように相続人に保管場所を知らせておくことも必要になります。大事な情報ですので、不動産の権利証や通帳・印鑑の場所などは書面ではなく口頭でお伝えして頂き、ネット銀行やネット証券の場合などはログインIDやパスワードもご本人様が亡くなった際には相続人が知れるように準備しておくことも必要です。
相続時には、どういった財産があるのかという情報だけではなく、関連する資料がどこに保管されているのかという情報の2つが重要となりますので、この2つを意識して資料は作成しましょう。
また、市販のエンディングノートもそれほど高い金額のものではございませんので活用するのも一つです。様式は様々かと思いますが、財産情報や、知人などの連絡先、葬儀に関する事項、契約情報、資料の保管場所などを記載されることが多いと思います。これらの情報がまとめられているだけで、ご相続後の手間が全然変わって参ります。
このように、まずは現状把握して頂くことが相続対策の第一歩となります。相続税の納税が必要な方については、どれくらいの相続税負担が発生するのか試算をすることも重要となります。相続で引継ぐ財産で、相続税額を全てカバーできるのか、又は不足額がある場合には相続人ご自身で準備する必要がありますので、どれくらいの金額が必要なのか等を事前に把握することが大事です。
参考に相続税の早見表は以下をご参照下さい。配偶者は法定相続分と1億6,000万円のいずれか大きい金額まで財産を取得しても相続税額が軽減され、結果として配偶者は相続税の負担は無くなります。下記の<表2>は、配偶者が50%財産を取得した場合の相続税額を記載しております。
2.生前整理について
まずは、現状の財産のご確認をして頂いた後、不要な資産を整理することが次のステップです。
金融資産については、冒頭でも記載しましたが取引先金融機関をまとめる方が相続時には手続きが少なくて済みます。預金口座については、使用頻度が低い少額の預金口座など解約しても支障がない口座は解約しておくべきです。解約した預金通帳についても、預金通帳は破棄せず保管するようにしておきましょう。預金通帳については、ご相続が発生した際に、相続税の申告書を作成する上で必ず異動内容を確認します。預金通帳が残っていない場合や、通帳記帳を失念し合計記帳されてしまった場合には、金融機関に有料で入出金明細を発行依頼する必要がありますので、余分な費用がかかってきます。その必要がないように、預金通帳については繰越済みとなった通帳も含めて、保管しておきましょう。通帳なし口座やネットバンクなど通帳がない場合には、1年に1回程度、取引データを保管するか紙で出力して保管して頂くと、閲覧期間が過ぎて見れなくなるという事態を防ぐことが出来ると思います。
証券口座も基本的な考え方は預金と同様です。預金との相違点は株式や投資信託を相続する場合、相続人も同じ証券会社の証券口座を開設することが原則です。預金の場合は新たに口座を開設する必要性はありませんので、証券の手続きは預金の解約よりも手間がかかることも多いと思います。可能であれば事前に不要な証券口座は解約しておきましょう。
銀行が倒産してしまった際に、一定額の預金を保障する制度を「預金保険制度(ペイオフ)」といいますが、保証されるの1,000万円までです。円預金はペイオフの対象となりますが、外貨預金はペイオフの対象となりません。この制度を考慮して、分散して預金されている方もいらっしゃるかと思いますので、その場合は無理に集約する必要はございません。個人的には信用力の高い倒産リスクのほとんどない金融機関に集約すれば問題ないかと思っております。
金融資産以外の不動産や動産などの場合も、基本的には金融資産と同様です。不要な財産の処分が将来の相続対策に繋がって参ります。不動産の場合には、不要な不動産の処分もお時間がかかります。まずは不動産について①代々承継していきたい不動産、②必要に応じて売却してもいい不動産、③処分したい不動産に色分けして頂くことから初めて頂き、処分をご検討するのが宜しいかと思います。
不動産を貸している場合には、不動産賃貸借契約書や過去の確定申告書も整理して保管しておきましょう。敷金がある場合には、将来貸主に返還しなければなりませんので、相続税額の計算でも債務に該当し、相続税額の負担が減額されます。
先代名義(祖父母の名義のまま未登記となっている状態等)の不動産についても、きちんと相続登記を行うことがベストですが、先代のご相続の際に誰が取得したのか明らかにしておきましょう。
3.遺言書の活用
遺言には、①公正証書遺言、②自筆証書遺言、③秘密証書遺言の3種類があり、①公正証書遺言、又は②自筆証書遺言のいずれかで作成されることが多いです。
遺言書は、法律によって記載すべき内容が定められており、不備があればその遺言書は無効となります。自筆証書遺言は費用がかからず短期間で作成が可能というメリットはありますが、第三者のチェックが入らないため無効のリスクや遺言書の紛失リスク、記載内容に問題があり紛争リスクが生じてしまうデメリットがあります。
公正証書遺言については、法律のプロである公証人が内容を確認し、証人2名の前で遺言書の内容を読み上げ行い遺言書の記載内容を遺言者に確認を行いますので、無効となるリスクがほとんどございません。また、公証人役場においても遺言書が保管されるため、紛失リスクもございません。公証人手数料が発生しますが、遺産分割協議がまとまらず、将来紛争となった際の弁護士費用や裁判費用などが発生すると更に費用は発生しますので、将来のリスクに備えたしっかりとした遺言書を遺しておく方がご安心かと思います。さらに、遺言書があることでご相続が発生した際、相続人の名義変更手続きの手間を減らすことにも繋がります。
4.まとめ
生前の対策を行っているのと行っていないのでは、ご相続時に大きな違いが出てきます。特に財産調査について苦労されているご相続人の方が多い印象を受けます。何かきっかけが無ければ、相続の対策をお考えになることも少ないとは思いますが、体調が悪くなってからでは資料の整理や、不要物の処分などを行うことは難しく、結果何も整理出来ていないといった事態になる可能性も多いと思います。相続対策はお元気なうちに少しずつでもいいので始めていきましょう。
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