贈与税の非課税制度を活用しましょう(教育資金の非課税)
2023/01/21
贈与税の非課税制度の概要
相続対策する中で生前贈与はよく活用されております。令和5年の税制改正の中で暦年課税制度と相続時精算課税制度の二つの贈与制度について税制改正が予定されております。生前贈与を検討する中で、皆様もお聞きになられたこともあるとは思いますが、毎年110万円までは贈与税の基礎控除額の範囲内であるため贈与税が課税されません。
しかし、贈与する財産の目的や使用方法などによっては110万円の基礎控除とは別に非課税制度が設けられております。その中で、代表的な非課税制度についてご紹介させて頂きます。
今回は、教育資金に関連する二つの制度について、内容を見ていきたいと思います。
- 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの(以下「都度贈与」と記載させて頂きます。)
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直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税(以下「一括贈与」と記載させて頂きます。)
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直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
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直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税
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贈与税の配偶者控除(婚姻期間が20年以上)
教育資金の「都度贈与」と「一括贈与」の相違点
どちらも教育資金として使用することを前提として、贈与した場合に非課税となる制度という点では共通してます。
しかし、両者には手続きの方法や、申告手続きの有無などが明確に違っており、活用する場面も異なって参りますので、まずはそれぞれの制度の概要を見て頂ければと思います。
1.「都度贈与」について
学校への入学金や授業料の支払が必要となったタイミングで贈与を行うのが1.の「都度贈与」です。
「都度贈与」は、税務署への手続き等は必要ないため、比較的手軽に行うことが出来ます。ただし、教育資金などに使用したことが分かる請求書・領収書などの資料は、後でお金の使用方法が分かるように残しておくことは忘れずにしておきましょう。より確実に非課税とするためには、学費の支払などを学校へ直接支払って頂き、領収書などを保管して頂くことが望ましいです。
この規定で記載されている扶養義務者とは、①配偶者や②子や孫の直系血族、兄弟姉妹、このほか③三親等内の親族で生計を一にする者等が該当します。
生計を一にするという概念は単純に言うと、一つの財布で生活しているような状態のことを言いますが、判断が難しい場合もあるかと思います。
この制度で特に注意して頂きたいのは、将来に授業料などに使用するからといってまとまった金額を渡してしまうと、それは非課税にならず贈与税が課税されてしまいます。
まとまった金額を渡す場合には2.の制度を活用することになります。
2.「一括贈与」について
この2.「一括贈与」の概要をお伝えすると、教育資金を一括で1,500万円まで贈与しても贈与税が非課税となる制度です。この1,500万円の判定については、例えば祖父母からそれぞれ1,500万円ずつ贈与を受けた場合には、合計3,000万円のうち1,500万円だけが非課税となります。つまり、非課税の限度額は受贈者を基準に判定することになります。また、この制度を受けるためには金融機関を経由して非課税申告書という書類を提出する必要があります。このほか実際に学校の授業料や入学金、塾の費用を支払ったことが分かる領収書なども金融機関に提出する必要もあり、事務手続きが少々大変なところがあります。
次に大事なことは、子や孫が30歳になるまでに、贈与を受けた金額を使いきる必要があり、30歳に到達した段階で残額が残っていると贈与税が課税(一般税率)されてしまう点に注意が必要です。また、教育資金として受け取ったにもかかわらず、教育資金以外の用途に使用してしまった場合にも、贈与税が課税されてしまいます。教育資金の範囲は、こちらの文部科学省のホームページをご参照下さい。→文部科学省
さらに贈与をした人が死亡した場合の相続税の取扱いについても注意が必要です。
なぜなら、この制度が創設された当初は贈与者が死亡した場合には、教育資金の残額が残っていても相続税は課税されていませんでした。お孫様がまだ小さく、学費がそこまでかからないような場合に高齢の祖父母が「都度贈与」を行ってもそこまで大きな効果は見込めないと思われます。こうした場合には、この「一括贈与」を行うことにより、将来必要になるだろうと見込まれる教育資金を見越して大きな金額を贈与することで、祖父母の財産から切り離すことで相続税の対策として活用されておりました。
しかし税制改正によって現在は、令和3年4月1日以後のこの非課税制度の適用を受けた場合には、教育資金の残額が相続税の対象となってしまいます。
さらに受贈者が孫などの場合には、孫に課税される相続税の負担が2割多くなります。
ただし、相続税が課税されない場合としては受贈者が次のようなケースは従来と同様に相続税が課税されません。
- 23歳未満である場合
- 学校等に在学している場合
- 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合
(令和5年税制改正によって贈与者が死亡した場合に、相続税の課税価格が5億円を超えるときは、原則に戻り教育資金の残額に相続税が課税されます。これは、令和5年4月1日以後にこの制度を活用した場合に適用されます。)
このように受贈者の状況によっては、従来と同様に相続税が課税されないケースがありますので、お孫様のご年齢がまだ小さく、祖父母の方が比較的高齢であれば、従来と同様に相続税の対策として活用が出来ると思います。
まとめ
教育資金の贈与はこの2つの贈与の非課税制度を活用することになりますが、うまく活用しないと思わぬ贈与税負担や相続税負担が生じる可能性があります。
特に「一括贈与」の場合には、非課税の枠が1,500万円あるからといって、その非課税枠全額使ってしまうと、通常はなかなか使い切ることが難しいかと思います。実際に使いきれそうにないというお話を聞くこともあります。
この制度は追加で入金することは可能ですので、まずは使い切れるだろうと想定される金額だけ贈与して頂くことが、個人的には一番安全な方法だと思います。
相続税の申告を見据えた相続税の対策は税理士などの専門家に事前に確認などを行った上で実行して頂くことで、失敗がないように進めて頂ければ幸いでございます。
教育資金以外の贈与については、下記の記事に記載させて頂いておりますので、ご興味があればご参考にして頂ければ幸いです。
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